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平成27年度 英知を結集した原子力科学技術・人材育成事業 原子力基礎基盤戦略研究プログラム 戦略的原子力共同研究プログラム 選定課題

■戦略的原子力共同研究プログラム: 合計11課題

No. 提案課題名 研究代表者
[所属機関]
参画機関 概要
【テーマ1】原子力利用に係る安全性向上のための基礎基盤研究: 5課題
1 新しい事故耐性燃料「自己修復性保護皮膜つきジルコニウム合金」の開発
阿部 弘亨
[東京大学]
日本核燃料開発株式会社 福島第一原子力発電所の事故を受け、安全裕度の高い燃料被覆管の開発が求められる。本提案では、早期に実現可能な安全向上策として、被覆管表面を改質(皮膜を施工)した「自己修復性保護皮膜つき燃料被覆管」を開発する。まず材料開発として、炉内に存在する物質を用い、通常時には効率、安全に影響が無く、被覆管の腐食と水素化を抑制する材料と皮膜施工技術を開発する。これにより、事故時には炉内他部材との反応を抑制する。さらに、皮膜に傷や割れが生じた場合には、炉内に存在する物質と水化学の調整により自己修復する技術を開発する。総じて、安全裕度を向上させた燃料システムとして確立させ、実用化への目処をつける。
2 船舶を活用した海上移動型放射線モニタリングシステムの開発(海の道からのアプローチ)
小田 啓二
[神戸大学]
放射線医学総合研究所、大島商船高等専門学校、福井大学 東日本大震災のように陸上交通網や通信網が大きな損傷を受けてしまうような大規模自然災害における原子力発電所周辺の緊急時放射線モニタリング(ERM)の実施には、もうひとつの経路、即ち「海の道」からのアプローチが有効である。被害を受けなかった地域から船舶を派遣し、これにERM用機器・装備を搭載するとともに、相当数の原子力・放射線の専門家が乗り込むことによって海上の前線基地としての機能を持たせる。本プロジェクトでは、船舶と小型飛翔体を組み合わせた海上移動型モニタリングシステムの開発と附属練習船を発電所に派遣する航海実験を通して、現在の原子力災害対策の補強に関する提言をまとめることを目的とする。
3 原子力プラントの包括的安全性向上のための地震時クリフエッジ回避技術の開発
高田 毅士
[東京大学]
東京都市大学、日本原子力研究開発機構、東京電機大学、埼玉工業大学 原子力発電所は、周辺環境、建屋や機器、それらを操作・制御する人間を含めた複雑な系であり、地震時の安全性を議論する際には、その全体系を包括的に、相互関連性も考慮しながら検討することが極めて重要である。本研究では、原子力プラントシステム全体系を各分野領域横断的に取り扱い、全体系および各部の要求性能を明確化した後、それに係るクリフエッジを特定・定量化し、これらを回避する技術を開発することを目的とする。
4 原子力発電所等における停止時未臨界監視手法の開発
田代 祥一
[株式会社グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン]
福井大学 停止中の核種の崩壊に伴う反応度変化を高精度に補正できる微視的燃焼モデルを備えたBWR炉心シミュレータによる中性子源強度評価技術と、高ノイズ環境下での反応度評価を行うべく、開発・改良が行なわれてきた反応度計によるノイズフィルタリング技術とを融合させることにより、原子炉停止中の未臨界状態を監視する手法を開発する。
5 圧力バウンダリ構成部で使用されるステンレス溶接金属の熱時効脆化評価のための基盤技術開発
渡邉 豊
[東北大学]
北海道科学大学、物質・材料研究機構 機構論的に発現の可能性が考えられる、ステンレス鋼溶接部2相組織の熱時効組織変化の特異性の評価・把握、溶接部2相組織の熱時効に及ぼす中性子照射効果の評価、計算科学に基づく時効組織変化の予測技術開発を実施することで、圧力バウンダリ構成部に使用されるステンレス溶接金属の熱時効脆化評価の基盤技術を開発する。現時点で顕在化していなくても機構論的に発現の可能性が考えられる劣化事象に対して、プロアクティブに対応することにより軽水炉耐圧部材の信頼性をより一層高める取組みである。
【テーマ2】高温ガス炉に係る基礎基盤研究: 1課題
1 高温ガス炉の確率論的安全評価手法の開発
佐藤 博之
[日本原子力研究開発機構]
東京都市大学、東京大学、日揮株式会社 高温ガス炉の設計上、安全上の特徴を考慮した確率論的安全評価手法(確率論的リスク評価手法)の確立を目標に、高温工学試験研究炉の運転経験に基づく故障率推定手法や、グレーデッドアプローチを取り入れた事故シーケンス頻度評価手法、黒鉛構造物の損傷を考慮した事故影響評価手法を構築する。
【テーマ3】放射線影響・低減に係る基礎基盤研究: 3課題
1 被ばくによる発がんゲノム変異を定量できる新規放射線発がん高感受性マウスを用いた低線量・低線量率発がんリスクの解明
笹谷 めぐみ
[広島大学]
放射線医学総合研究所 福島原発事故、及び医療や産業分野での放射線の使用増加は、低線量放射線の健康リスクについて大きな懸念をもたらしている。低線量放射線の発がんリスクを解明する必要がある。本研究では、放射線高発がん性マウスを用いて、低線量・低線量率放射線照射による癌の発生とゲノム損傷を定量化し、統計モデルにより低線量と低線量率放射線によるがんリスクを推定する。最終的には、放射線防護の発展に役立つ科学的な基礎的知見を提供することに貢献したい。
2 エンリッチ環境によるEustress(よいストレス)で放射線のリスクを低減する
森岡 孝満
[量子科学技術研究開発機構]
東邦大学、茨城大学、東京大学、産業医科大学 エンリッチメント環境(広いスペース、運動、種々の遊具)は「よいストレス」と考えられており、脳機能を活性化するのみならず、老化予防やがん予防にも効果があることがわかりつつある。本研究では、環境エンリッチメントによる内分泌環境並びに免疫機能の変化と、放射線影響の低減効果について検討する。
3 PNA-FISH法を用いたハイスループット生物学的線量評価法の開発
田代 聡
[広島大学]
(他部門連携) 『低線量放射線被ばくの人体影響を解明するために、PNA-FISH法を基盤技術として、末梢血リンパ球の染色体異常について効率的かつ高感度な自動解析システムを開発し、CT検査症例の臨床検体を用いた同システムの有用性の検証を行うことで、低線量放射線被ばくの「ハイスループット生物学的線量評価法」の確立を目指す。このために、自動解析を実現する技術の開発、蛍光顕微鏡が不要な染色体解析技術の開発、臨床検体への適用性向上を並行して進め、100 mGy以下の低線量放射線被ばくの影響を迅速に解析できるシステムを開発する。』
【テーマ4】原子力に係るリスクコミュニケーション等に関する研究: 1課題
1 原発事故に対応した教育行政・教育現場におけるリスク管理・リスク教育とグローバル人材育成
山口 克彦
[福島大学]
滋賀大学 福島第一原子力発電所事故当時から現在までの教育現場におけるリスク対応の実績と課題を整理し、福島の教育現場において今後の有効なリスクコミュニケーションの方向性を見いだしていく。その上で、科学的合理性を伴った放射線および原子力への対応を行えることができる教育体制への指針と長期にわたる廃止措置等の活動を担う社会基盤の構築に必要な人材育成の在り方を提示する。
【テーマ5】原子力の技術革新につながる基礎基盤研究: 1課題
1 ウラン選択性沈殿剤を用いたトリウム燃料簡易再処理技術基盤研究
鷹尾 康一朗
[東京工業大学]
(他部門連携) 使用済トリウム燃料溶解条件におけるU(VI)およびTh(IV)の沈殿剤との化学的相互作用や溶解基礎物性の解明並びに相互分離実証試験を行い、ウラン選択的沈殿剤を用いたトリウム燃料簡易再処理技術基盤を構築する。