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令和6年度 英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業 課題解決型廃炉研究プログラム 選定課題

■課題解決型廃炉研究プログラム 合計7課題

■令和6年度選定課題:7課題

No. 提案課題名 研究代表者
[所属機関]
参画機関 概要
1 高放射線耐性を有する無線データ伝送用チップセットの要素開発(ベースバンド回路開発) 宮原 正也
[高エネルギー加速器研究機構]
岡山大学、株式会社Piezo Studio 将来的に原子炉格納容器内、原子炉圧力容器内で使用可能な無線システムを構築するため必要となる、耐放射線性を有したRF(Radio Frequency)、ABB(Analog Baseband)、DBB(Digital Baseband)チップセット等の要素技術を2 つの申請の連携に基づき開発する。本提案では耐放射線シリコンCMOS集積回路技術を用いてABB、DBB 及びRF、BB両チップに基準クロックを供給するXO(Crystal Oscillator)の研究開発を行う。ABB コンポーネントにおいてはVGA(Variable Gain Amplifier)、ADC(Analog toDigital Converter)及びDAC(Digital to Analog Converter)等を高エネルギー加速器研究機構(KEK)中心に行う。DBBコンポーネントにおいては符号化、誤り訂正等デジタル信号処理回路のASIC(Application Specific Integrated Circuit)実装、耐放射線化と、耐放射線SRAMの開発を岡山大学中心に行う。また、ABBとDBBの相互接続における機能及び性能検証のためのソフトウェア/ハードウェア協調設計環境の構築をKEK、岡山大で協力して行う。XOコンポーネントにおいては低消費電力振動子(CTGS)の開発と発振回路の耐放射線試験をPiezo Studio中心に行う。到達目標として連携申請で開発するRF と合わせ、次期プロトタイプ開発で使用可能なコンポーネントを開発し、ビットレート2.5Mbps以上、1MGy以上の積算線量の実現を目指す。
2 高放射線耐性を有する無線データ伝送用チップセットの要素開発(高周波アナログ回路開発) 白根 篤史
[東京工業大学]
大熊ダイヤモンドデバイス株式会社、名古屋大学、北海道大学 将来的に原子炉格納容器内、原子炉圧力容器内で使用可能な無線システムを構築するため必要となる、耐放射線性を有したRF(Radio Frequency)、ABB(AnalogBaseband)、DBB(Digital Baseband)チップセット等の要素技術を2つの申請の連携に基づき開発する。高エネルギー加速器機構が知見を有する耐放射線シリコンASICの技術ノウハウを活用し、本提案ではRFコンポーネントに含まれる低ノイズアンプ、ミキサー、パワーアンプ、ローカル回路等を東工大中心に開発する。さらに電流密度が高く耐放射線性強化が望ましいパワーアンプはSi ASICと並行し、大熊ダイヤモンドデバイス社、名古屋大学、北海道大学が連携しダイヤモンド半導体技術に基づき開発する。またDC-DCコンバータに関する検討も行う。到達目標として連携申請で開発するABB、DBBと合わせ次のプロトタイプ開発で使用可能なコンポーネントを開発し、ビットレート2.5Mbps以上、1MGy以上の積算線量の実現を目指す。
3 高線量かつ不可視環境下での炉内可視化を可能とするレーザ偏向検出型超音波広帯域3Dイメージングシステムの開発 木倉 宏成
[東京工業大学]
室蘭工業大学、エネルギー総合工学研究所、合同会社玉浦ラボ、日本原子力研究開発機構 東京電力HD福島第一原子力発電所廃炉を安全に遂行するため、デブリ切り出し作業を遠距離で監視する新規技術である光音響プローブを用いたレーザ偏向検出型超音波広帯域3Dイメージングシステムを提案する。光音響プローブは、超音波(疎密波)によって生じるレーザ光の偏向現象を利用し、光波により音波を検出する。これにより従来の超音波振動子では実現しえない超広角広周波数帯の瞬時超音波受信を可能とし、強力超音波送信と組み合わせることで本システムを実現する。そのため、超音波数値解析を援用したイメージングシステムの設計・検証を行うとともに、その性能を実験的に明らかにする。また、本システムをデブリの元素分布計測自動化に応用するとともに、小型高性能バッテリによる計測システム遠隔化への可能性を模索する。これらシステムの耐放射線性を、東京工業大学コバルト照射施設を用いて確認し、システム開発から現場適用性検証までを一貫して実施する。
4 視界不良・高線量下での空間認識のための超音波可視化技術 林 高弘
[大阪大学]
日本大学、東北大学 燃料デブリ破砕時の視界不良下での作業性を向上させるため、燃料デブリや破砕工具、周辺構造物を可視化する技術を開発する。視界不良の要因となるダストの影響を受けにくい波長の超音波を用いた超音波フェイズドアレイ(PA)技術を検討し、5mm以下の分解能による物体可視化技術を目指す。超音波センサを含む計測システムは、耐放射線性が高い箇所のみを対象物に近づけ、それ以外を高線量域外に設置するような構成とすることで、可視化だけでなく長期間のモニタリングも可能なシステムを構築する。そのために、「空中超音波PAデバイスの開発」(日大)、「高フレームレートPAによる粒子浮遊環境下での可視化スキームの構築」(東北大)、「高強度ガンマ線環境に対応する超音波計測手法の開発」(阪大)の3項目を実施し、それらを統合して視界不良・高線量下での可視化を実現するため、「超音波PA計測による空中・水中での物体形状の可視化」(阪大)を実施する。
5 耐放射線性を有するレーザスキャナとAI・画像処理による3Dモデリング法の開発 福田 知弘
[大阪大学]
理化学研究所、クモノスコーポレーション 本研究は、PCV/RPV内部の構造物の状況把握に向けた特定ニーズ「耐放射線性レーザスキャナ及び耐放射線性無線伝送アクセスポイント等を構築できる技術」の内、耐放射線性レーザスキャナと作成する点群の高質化に関する技術開発を行う。まず、高強度放射線下において半導体素子の利用を排除して耐放射線性を有する電気・機械素子のみで構成されるレーザ走査部と、遠隔地の低線量場に設置する制御部が分離した3Dレーザスキャナシステムを開発する。開発した3Dレーザスキャナと商用化されている非耐放射線性3Dレーザスキャナを比較しながら性能評価すると共に、開発したスキャナが取得する粗な点群に対して機械学習等により解析し新たな点群を増強・補完するシステム、及び、写真群から対象物の3Dデータを生成するフォトグラメトリ技術により点群を補完するシステムをそれぞれ開発することにより、信頼度のより高い3Dデータを得るための方法と技術を構築する。本研究で開発する技術とシステムは、廃炉工程を進めるうえで不可欠である。
6 データ駆動型オンサイト診断技術:長期的健全性を確保するための微生物腐食リスク予測 若井 暁
[海洋研究開発機構]
物質・材料研究機構、電力中央研究所、日本製鉄株式会社、日本原子力研究開発機構 1Fには様々な水環境(処理水タンク、原子炉建屋内、サブドレンなど)が存在し、そこには様々な微生物が存在している。しかしながら、現状の技術ではこれらの水環境に対して微生物腐食のリスクを予測することはできず、長期的健全性を確保するための診断技術の確立が早急に必要である。提案者らは、世界に先駆け微生物腐食の診断に必要な重要要素技術(腐食性微生物培養技術、高腐食性微生物濃縮技術、遺伝子解析技術、統計的解析手法)を開発した実績を有する。本研究では、ハイスループットな解析手法の開発や現場環境を模擬した試験、事故炉環境を想定した試験を通して、データ駆動型の統計解析を駆使し、高精度に微生物腐食リスクを予測することが可能で、現場適用が容易な革新的オンサイト診断技術のプロトコルを確立・提供する。
7 デブリ取り出しの安全性確保を目的とした中性子源等のイメージング手法の研究 松林 錦
[京都大学]
福島大学、東北大学、日本原子力研究開発機構 PCV/RPV内は高放射線環境であり、多量の放射線源が内在されていることから、核燃料やデブリ由来の中性子源を特定することは困難である。そのような環境において、中性子源の分布を把握することができれば、デブリ取り出しに向けた内部調査及び取り出し時における臨界管理の観点で有用な情報把握が期待され、効率的な燃料デブリ取り出しにつながる。そこで、原子炉建屋内環境下における中性子の把握を目的とした放射線イメージャーを開発する。本研究では、これまでに開発した小型軽量な全方位型放射線イメージャーを中性子検出用として製作するため、最適な検出器構造を設計・製作するとともに、放射性セシウムやコバルトによる高線量率環境下における検出システムを開発・整備する。これにより逆解析手法を用いることで、中性子源分布を3次元的に把握することができる。核燃料物質の位置、強度分布を把握することはデブリ取り出しの内部調査だけでなく、廃炉作業を円滑に進めていく上で幅広く適用可能な要素技術となり、その利活用の範囲は大きい。