中間・事後評価結果

 資料1

原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブ フィージビリティスタディ(FS)課題
事後調査報告

FS課題名:マルチステークホルダー時代の原子力開発利用の3S実効性確保
代表研究者(研究機関名):田邉朋行(財団法人電力中央研究所 社会経済研究所)
研究期間及び予算額:平成21年度(9ヶ月)4,463千円
項目 要約
1.総合所見  本課題は、2008年7月に開催されたG8北海道洞爺湖サミットにおける我が国の提案「3Sに立脚した原子力エネルギー基盤整備に関する国際イニシアティブ」に対応した委託事業である。我が国の3Sイニシアティブの国際展開及びその前提としての3Sインフラの国内における実効性確保を図ることを目的としたが、課題の大きさと重要性に鑑みて、1年間のフィージビリティ・スタディ(FS)を実施することとし、原子力利用における3Sの各主要課題のうち国際的な観点から対応要請の高い核セキュリティ問題に焦点をあて、セキュリティ対策の制度的・技術的選択肢を探索・同定した。つまり安全性や保障措置・核不拡散の実効性に貢献しつつ、内外の多様なステークホルダー(利害関係者)に受け入れ可能なこと、我が国とって受容性が高く新興原子力開発利用国にも参考となることを要件として、セキュリティ対策についての問題設定、検討を実施した。この研究成果に関しては、IAEAで議論され、2011年2月に出された核物質防護に関する勧告(INFCIRC/225/Rev.5)改訂との関係もあり、時宜を得た重要な成果であると評価できる。とりわけ、内部脅威対策等のセキュリティ施策が導入された場合における法改正の必要性等に関する議論は、INFCIRC/225/Rev.5改訂への対応としても参考となるものである。我が国における総合的な3S課題克服施策解明に向けた研究推進体制の基盤に関しては本FSで構築した人的ネットワークを活用すべく次年度の原子力基礎基盤研究イニシアティブへの応募を視野に入れての今後の具体的な検討を期待する。
2.事後調査  FSとしては十二分の成果をあげ、本格的な研究提案のための研究体制を確立したと考える。核セキュリティ課題に関しては、現在各省庁で個別に検討及び対応が行われているものの、その連携や全体総括機関がないという指摘もあり、核セキュリティ対策の実効性と説明責任とを担保する国全体のガバナンス体制についての課題も報告書で問題提起して欲しかった。また本成果での提案の他に、第三者監査制度等の選択肢が考えられ、他産業、例えば航空産業との比較等を行ってみることも今後必要となろう。3Sと国際展開に関する議論で、国際標準化の話題について触れているが、我が国では原子力国際展開と国際標準化戦略との関係が十分に議論されていない。本FSによる検討がその議論の契機になれば良いと考える。原子力国際展開に関しては、国際化の中でのCode of Conduct (原子力国際展開において、発注国・受注国双方が遵守・確立すべき行動規範) 確立の観点から議論するほうが学術研究としての価値が高い。例えば、3Sに関する国際標準化の整備、(狭い意味での3Sに限定されない)原子力損害賠償制度の導入、システム輸出の条件(軍事サービスとパッケージ化しない、発注国側も施設運営に関して責任を負える体制とする等)、炭素クレジット化の制度設計等についての今後の検討・提案を期待する。
3.その他  核セキュリティ関連の成果及びそこで構築された人的ネットワークに関しては、今後は今年度のFSである「核燃料物質海上輸送時も脆弱性評価手法」(海上技術安全研究所)にそれを活用する他、INFCIRC/225/Rev.5改訂への対応やセキュリティ・ガバナンス(第三者監査制度等)の研究に繋げ、国際展開に関する成果に関しては、他機関との連携を図りながら、Code of Conduct の研究に繋げて欲しい。

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